Research Release

Research Release 2026-001 ·

日本の病院勤務医をめぐる構造的インセンティブ

Human Resources for Health に研究成果を発表

九条丈二(George Kujo)は、査読付き学術誌 Human Resources for Health に、論文「Physician workforce imbalances in Japan: how structural incentives shape hospital-based acute-care capacity」を発表しました。

本研究は、日本の医師不足を単純な「医師の総数」の問題として捉えるのではなく、医師がどこで、どの診療領域で働き、病院にどれだけ定着するかという配置と定着の問題として検討したものです。

研究のポイント

日本では医師数そのものは増加してきました。しかし、病院の急性期医療を支える医師の確保は、全国的な医師総数だけでは説明できません。

本研究では、とりわけ次の点に注目しました。

  • 医師不足には、絶対数の不足だけでなく、地域・診療科・勤務形態をめぐる偏在があること
  • 病院勤務と診療所勤務の間に、勤務負担や報酬、キャリア上のインセンティブの違いが存在すること
  • 救急、外科系など高い勤務強度を伴う領域では、単純な医師数の増加だけでは病院の診療能力を維持できない可能性があること
  • 病院から診療所への移行を含む医師のキャリア移動を、医師数の静的な分布だけでなく長期的に把握する必要があること

「医師を増やす」だけで十分なのか

医師不足への政策対応では、医学部定員や医師総数が注目されやすい一方、医師がどの職場に残るのかという問題は別に考える必要があります。

全国の医師数が増えても、病院勤務を続けることの負担が大きく、別の勤務形態へ移るインセンティブが強ければ、病院の急性期医療提供能力が同じように増えるとは限りません。

したがって、政策評価では「医師が何人いるか」だけでなく、

どこに配置されているか、どこに定着しているか、そしてなぜ移動するのか

を区別して観察する必要があります。

政策への含意

本研究は、特定の単一政策を提案するものではありません。

むしろ、医師確保政策を評価する際には、全国的なheadcountだけではなく、病院への定着、診療科間の偏在、勤務負担、キャリア移動などを含む複数の指標を見る必要があることを示しています。

特に、病院から診療所への移行や診療領域間の移動を長期的に追跡できるデータは、今後の医療人材政策を評価するうえで重要になります。

論文情報

George Kujo.

“Physician workforce imbalances in Japan: how structural incentives shape hospital-based acute-care capacity.”

Human Resources for Health. 2026;24:44.

DOI: 10.1186/s12960-026-01099-3

About the Researcher

George Kujo / 九条丈二

Independent Researcher

医療政策、医療倫理、公共政策、制度設計と説明責任を中心に研究しています。制度がどのようなインセンティブを生み、その結果として個人や組織の行動がどのように変化するかに関心を持っています。

Research contact: Research@georgekujo.com